
BEST RECORDS 0F 2025
HORAANA LIBRARY NEW ARRIVALS
世界中の音楽メディアやレコードショップが年間ベストを発表する年の瀬。
そこで知らなかった音楽との出会いが生まれたりもして。音楽を通じてこの一年間を振り返ったりする恒例行事としてなかなか良いものですね。
2025年は、例年よりたくさんの新譜がホラアナライブラリーにやってきた気がします。
ということではじめて、HORA AUDIOの年間ベストを作ってみることにしました。
ハッキリ言って偏っているかもしれませんが、ひとりの音楽愛好家が2025年にどんな音楽を聴いて、レコードを購入するに至ったかという記録に過ぎませんので、あしからず。
お正月休みのヒマつぶしにでもどうぞ。あたらしい音楽に出会えるちょっとしたきっかけになれば嬉しいです。
NEW ALBUM
2025年リリースのニューアルバム
試聴はDiscogsリンクページからのYouTube、もしくはBandcampやサブスクでどうぞ。

Butterfly – The Music of Butterfly
Family Friend Records
静かに、とても驚いた。この時代にこんな音楽が生まれたことを。演奏・録音・マスタリング・アートワーク・リリースというほぼ全ての工程をDIYでこなし、このクオリティ。余分なものが何もないという美しさ。なんとも贅沢な気持ちになった。一音一音が身にこころに染みた。アナログづくしの妙技。

Torso – Faces
Ozato Record
チェロ・フルート・サックスによる生楽器のアンサンブルに控えめに添えられるエレクトロニクスの塩梅が絶妙。クラシカルな調べに混ぜられる実験性(=雑味)がさらに音楽の味を引き立てている。ついつい料理に例えたくなるジンワリとおいしい音楽。特定の枠に収まらないこの自由な感じ、この食べ物はいったい何?

Mathieu Boogaerts – Grand Piano
Tôt Ou Tard
こんなにたびたび溜息が聞こえてくるアルバムって珍しい。気持ちわかります。今の時代だし。持ち前のほのぼのした雰囲気はあるけれど、どこか気分が上がらない感じ。でも現実世界を受け入れて、無理せず、自分に嘘つかず、マイペースでやってみる。ありがとう。こんなテンションの音楽が本当に聴きたかった。

Steve Reich – Jacob’s Ladder / Traveler’s Prayer
Nonesuch
ライヒのファーストアルバムのレコード盤を今年手に入れた。1968年の『Live / Electric Music』だ。A面『Violin Phase』の出だし一音で、僕が知るライヒの全てがひとつとなってダイレクトに脳へ伝わった。ライヒの表現はとても大きくてひろくて、自分はまだその一端しか理解していない気がするけど。人類に捧げられたような2025年作。未来ではバッハような存在になるのでは。

Blood Orange – Essex Honey
RCA / Domino
意外なところでトリガーが引かれることがあるものだ。20歳前後のネオアコやインディポップを熱心に聴いてた頃の感情が突如よみがえった。当時の愛聴盤では今までそんなこと起きたことないのに。今の時代だからこそ生まれた才能と音楽。イギリスの空気がいっぱい詰まってます。

Areski – Long Courrier
Kuroneko
ふだんは特に意識していないのに、いざ出会うとその存在の大きさを実感する人がいる。僕にとってアレスキーはそういう人。レコード棚でたまに遭遇するアレスキーが今年2枚に増えた。新しいのは、目をそらされるけど。

Pino Palladino And Blake Mills – That Wasn’t A Dream
Impulse!
ピノの演奏を聴きながら「次はディアンジェロの新作でファンキーなベースを」と勝手に妄想していたら…。インパルスからこんなにフワフワした音楽がリリースされるのが今っぽい。アンビエント・ジャズって、現代版80年代フュージョン?って考えが一瞬頭をよぎった。

キセル – 観天望気
カクバリズム
こんな作品に出会えて日本に生きる人間としてとにかく嬉しくなる。自分に潜んでいる「和」の感性をくすぐられる音楽。ブラジル人にとってのサンバはこんな感じなのかな。そうそう、こんな世の中だからこそ今は土着に生活して観天望気で生きていかないとね。

Mac Demarco – Guitar
Mac’s Record Label
地味に攻めたアルバムだと思う。199曲という凄まじいボリュームの前作で過去を吐き出したあとにこう来るとは。ベテランにとってシンプルな表現ほど勇気がいるような気がする。ハイとローを行き交うヴォーカルスタイルも新しい。新生マック、力の抜き具合がさすが達人。

Rafael Toral – Traveling Light
Drag City
今年ついにラファエルのライブを観た。たいそう感動した。人柄がそのまま音になっていた。帰宅後インタビュー記事を見つけたら、ライブで自分が感じていたことの答え合わせのようだった。「美は好みを超えたところにあるもの」。スタンダードジャズとはそういうものであることを証明してくれているような新作。
ARCHIVE ALBUM
過去のアーカイブアルバム
発掘音源や新たに選曲されたコンピレーションなどの初出アルバム。再発モノは除く。

Jeremy Dower / Tetrphnm – Personal Computer Music, 1997-2022
Chapter Music
コンピューターでこんなに愛らしく軽妙な音楽を生み出せるなんて。やはり作り手がカナメ。

Arthur Russell – Sketches For World Of Echo & Open Vocal Phrases Where Songs Come In And Out
Audika
もう出ないと思っていたら、こんなライブ音源が発掘された!瞬時に80年代ニューヨークのロフト空間へタイムトリップ。

ゑでぃまぁこん – Carpet Of Fallen Leaves
Chapter Music
輸入盤のアナログレコードで聴くとちょっと新鮮に響く。Wジャケのアートワークも凝ってて嬉しい。海外コンピでは2005年以来。

Various – Conscience Let Me Be
Pyramid Records
洗練されたものよりもオブスキュアでざらっとしたソウルが今の気分。

Repetition Repetition – Fit for Consequences: Original Recordings, 1984-1987
Freedom To Spend
80年代ニューウェーブ期でこの軽やかさはとても珍しい。今のバンドみたい。

Various – Spiritual Jazz 18 • Parts 1 & 2 = Духовный Джаз 18 • Часть 1+2 (Behind The Iron Curtain)
Jazzman
グローバル化以前の文化遺産。枠や壁があるからこその個性。環境とクリエイティビティについて考えてしまう。

Cindy Lee – Diamond Jubilee
W.25th
データ音源だけだった2024年個人的ベストアルバムがついにレコードに!サイケ感が増します。

Brigitte Fontaine – Areski Belkacem – Baraka 1980
Kuroneko
二人にとっては異色なアレンジだった1980年Saravah盤のオリジナル音源。こちらもまいどな感じで素晴らしい。

Evelyne / Masao – Testpattern
Dark Entries
こんなユニットが組まれてたなんて!今はなき小粋な東京のおんがく。

Francis Bebey – Trésor Magnétique
Africa Seven
あるだけ全部リリースしてください。ベベイを聴いたらわけもなくご機嫌になれるので。

Various – Leave Earth
Death Is Not The End
今年3ヘッドのカセットデッキを手に入れて、テープサウンドの虜に。クレジットが無い謎のジャマイカ音楽を聴くには最高のオーディオ音質。

Akio Niitsu – Hoax For Electric Guitar
Bridge Inc.
オリジナリティにおいて「創意工夫にまさるものなし」ということが音を通じて学べます。コスパ・タイパという言葉が流布したこの先、こんな音楽が出てくるだろうか。
選者コメント
毎日新しい音楽を何かしら聴いている。
コロナ禍に入ってから、気がついたら日課のようになってしまった。新聞に目を通すのと同じように、音楽を通じて今世界で何が起こっているのか、ひとびとが今何を考えて生きているのかを知りたいのだ。
新譜の情報源は世界各地のレコードショップやレーベルからのメールニュースがメインで、自らアルゴリズムのお世話にはならないようにしている。情報としては発信元がはっきりとしてして、かつ対象を限定していない、開かれたものが望ましい。
自分で選んでいるようで、知らないうちに選ばされている、というのが現代。勝手に「メイドフォーユー」や「あなたにおすすめ」された情報はおせっかいに感じる。前の時代だったら、自分のためにだけにセレクトされたニュースのみが掲載された新聞紙が無料で毎朝ポストに届けられるのと同じこと。以前はありえなかったこと、違和感を感じていたであろうことがちょっと形を変えて、当たり前のような顔してそこにある。そんな時代。
とはいってもインターネットのおかげで、日本の片田舎に住みながら、世界中のニューリリース音源をリアルタイムで聴けるわけだから、これほどありがたいものはない。しかもその気になれば無料で。便利さを超えてアナーキーさを感じつつも、やめられない。
レコードが手元にあるということは、身銭を切って正真正銘「自分で選んだ」あかし。自らの音楽ライフの記録としても重要な意味を持っている。円安・物価高で新品アナログレコードを気軽に買えなくなったいま、新譜を購入する基準はその作品の良し悪しだけではなくなっている。言葉で表すのが難しいが、なんとなく「そばにいて欲しい」と思えるかどうかのような。
気がついたら、21世紀はもう四半世紀を過ぎようとしている。けれど、正直いまだ2001年以降の音楽はそれほど多くは理解できていない。いつだって話題にのぼらないところで、自分にとって素晴らしい音楽がひっそりと生息している。そんな期待を胸に、日々リスニングはつづく。
青柳亮